文化を護り伝える矜持

本日は籔内佐斗司氏のSNSより・・・・・・

 

文化を護り伝える矜持
奈良県立美術館 館長・籔内佐斗司
 有形・無形を問わず、先人が生み出したよき文化はそれを受け継いだものが誇りを持って護り伝える責務があります。
外国の客人とタクシーに乗っていたときのことです。
横断歩道の手前で運転手が停車すると、待っていた歩行者の母子が丁寧に頭を下げて急ぎ足で渡って行きました。
それを見た彼は、「私の国では、車が譲るのは当然の義務だから、歩行者が停まった車に会釈することはめったにない。まして駆け足で渡るようなことはありえない」と大いに驚いた様子。
もちろん日本でも歩行者優先は絶対の権利ですが、それと同時に心配りをしてくれたひとに感謝の気持ちを態度で伝えることは、忖度や廉恥を弁えた誇るべき日本人の文化です。
 文化と言えば、最近、性の多様性を推進するLGBTQが大賑わいです。
しかし、江戸時代までのわが国では、衆道(しゅどう)や陰間(かげま)、稚児(ちご)性愛という多彩な性文化が社会的に広く認知されていました。ところが明治以降、浮世絵や春画をはじめ、おおらかな性風俗や子孫繁栄を願う性器信仰が、「欧米に対して、野卑で恥ずかしい文化」だとして政策的に隠蔽され、現在もその影響は残っています。
2014年に大英博物館で9万人の入場者を記録した『春画展』が、日本のすべての国公立の博物館・美術館で開催を見送られたことはその一例でしょう。
 しかしわが国では、歌舞伎や舞踊、華道界などを例に出すまでもなく、同性愛の性向を隠さないタレントや芸能人は枚挙に暇ありませんし、その生きざまゆえに人気を集めたりもします。
もちろん、個人的な嫌悪感や少数者への差別感情を示すひとはいたかもしれませんが、宗教的倫理観で非難したり、刑法によって社会的に処罰するという発想は起きませんでした。
神もほとけも法律までも、ひとさまに迷惑をかけないかぎり民事不介入がこの国の伝統文化。
 一方、米国では、Lesbian & Gay (同性愛)は神への冒涜であり、社会的に葬り去られるべき重大な犯罪と考える人は今でも少なからずいます。
英国では、第二次大戦中にコンピューターの原理を開発し対独戦勝利に大きく貢献したアラン・チューリング氏は、同性愛者であったが故に罪に問われ、ホルモン注射を強制されたあげくに自殺しました。・・・・
しかし英国政府によって彼の名誉回復が正式に行われたのは2019年のことでした。
音楽家のエルトン・ジョン氏がBisexual(両性愛者)であることを告白したときは、2年間の活動休止をやむなくされました。
国連機関であるWHO(世界保健機関)が、同性愛を疾病分類から除外したのは1990年、またフランスでTransgender(心と肉体の性自認の違和)が精神疾患から外されたのはわずか10年ほど前のことです。
欧米で急激に盛り上がっている性の多様性を積極的に認める風潮については、キリスト教倫理観によって社会が犯してきた過ちを、一神教圏特有の原理主義で一気に精算しようとする文化革命の真っ最中だということを認識し、神仏習合と慈悲のゆるやかな文化と宗教観を持ってきた私たちなりの対処の方法を考えるべきです。
 近年の欧米からの新しい思潮に対して、マスコミや自称進歩的文化人があたかも日本が遅れた国であるかのようにいう上滑りな論調が気になっています。
欧米文化にただ飛びついて追従するだけでなく、先人から承け嗣いできた歴史や文化と比較対応する努力を怠るべきではありません。
繰り返しになりますが、先人の文化は受け継いだものにしか護り伝えることができないのです。
                  2021年7月13日
                  館長 籔内佐斗司
画像;大英博物館『春画展図録』(2013)表紙
画像;2021年に発行されたアラン・チューリング氏をあしらった50ポンド紙幣
いろいろな作家・作品を見る機会が当然仕事柄多いのですが、作品として一部の浮世絵や春画を一般の方が見る機会は、そうありません。
*画像・内容は籔内佐斗司氏よりお借りしました。

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