異貌の神々

本日は籔内佐斗司氏のSNSより・・・・・・・・

 

 

 

 

館長の部屋 第50話
異貌の神々 序説
奈良県立美術館館長 籔内佐斗司
 明治維新までのわが国は、神道と仏教が混淆した神仏習合の宗教だったと学校では習います。
しかし、記紀神話に基づく神道の神々と、大乗仏教の六道輪廻が説く仏界や天部に属さない尊格を祀った寺社はたくさんあります。
特に修羅道や餓鬼道という闇の神格の場合、その真の姿が隠蔽されてしまっています。本稿では、そうした夜叉神について考えたいと思います。
なお、今回のタイトルは栗田勇さんの名著『異貌の神々』(1967)から拝借しました。
明治初年の神仏判然令によって、仏教寺院になるか神道系寺院になるかのどちらかを選択しなければならかったときに、記紀神話に説かれず仏教経典にも典拠のない尊格が神宮寺(神仏習合寺院)にはたくさん祀られていて、そうした神々ほど民衆の信仰が篤くて、おいそれとは廃棄できませんでした。たとえば、『館長の部屋 第25話 牛頭天王』にも書いた八坂神社(旧名「祇園感応院」)の本来のご祭神・牛頭天王は『日本書記』には見当たらず、神仏分離令以後に素戔嗚尊に比定されました。
しかし、「祇園祭」、「茅の輪くぐり」、「蘇民将来子孫之家門」の護符など、都人の信仰を支える神社のひとつとして牛頭天王はしっかり根付いています。
お稲荷さんは、大小合わせると3万社を超えるわが国有数の神格で、今も伏見、豊川、笠間の日本三大稲荷は、数多の参詣者が絶えません。
そのうち京都の伏見稲荷大社は、神仏分離の際に神宮寺の寺院(本願所)を廃して神社になりました。
一方、愛知県の豊川稲荷の正式名称は「円福山 豊山閣妙厳寺」という曹洞宗の大寺院です。
神仏分離以後も「荼枳尼真天(だきにしんてん)」は祀り続け、稲穂を担いでいる姿から豊川稲荷という通称が定着しました。
茨城県の笠間稲荷神社は、18世紀に朝廷から神位正一位稲荷大明神号を受け、その社格は明治以降も引き継がれることとなりました。
その稲荷神ですが、『日本書紀』に出てくる穀霊の神「ウケノミタマ」が稲荷神と習合するのは室町頃と考えられます。
その稲荷神の由来は、ヒンドゥー教のシヴァ神の妻でとても残虐な女神「カーリー・マー(黒い母)」とも称された「ダーキニー」でした。
彼女は死人の肝を喰うとされた恐ろしい神ですが、肝を喰われることで死人は浄化され、来世に転生できるとヒンドゥー教徒は信じていました。
ダーキニーが中国で荼枳尼と音写され、わが国に入って狐を使わしめとした神仏習合神「荼枳尼天」が穀霊神・稲荷権現となりました。
大乗仏教圏であるわが国の仏教は、真言密教系と天台系(浄土系と法華諸宗など)および禅宗系の三つに大きく分けられます。
空海がもたらした真言密教は、ブラフマー(梵天・過去世)、ヴィシュヌ(毗湿奴・現世)、シヴァ(大自在天・来世)の三神が輪番でこの世を支配するという時間軸を持ったヒンドゥー教の教義(トリムルティ)を仏教的に解釈し直したものと考えられます。
三神はそれぞれに自然現象と結びついた変化神(へんげしん)と数多の眷属を率いており、これを天部や夜叉神などとして再構成したものです。
一方、天台宗は、法華経を研究した最澄を嗣いだ円仁、円珍という傑僧が晩唐の密教を詳細に研究し、夥しい尊格を移入し大きく発展しました。
近世に入り、徳川家康の側近として辣腕を奮った天台宗の天海僧正は、江戸の地に天台密教の尊格をたくさん祀りました。
東京台東区の「おそれいりやの鬼子母神」で知られる鬼子母神は、ヒンドゥー教の女神ハーリーティで、中国で音訳されて訶梨帝母とも呼ばれました。たくさんの子を産んだ母神ですが、反面、子育てのためにひとの子を掠って食べていました。
そのことに気がついたお釈迦さまが、ハーリーティの子をひとり隠したところ、彼女は半狂乱になって探し回りました。
そこでお釈迦さまが、「たくさんの子を持つお前でありながら、ひとりでもいなくなるとそれだけ嘆き苦しんだ。
それが、たったひとりしかいない子を失った母の悲しみがどんなものかわかったであろう」と諭し、子どもを返しました。
すっかり改心したハーリーティは、その後、安産や子育ての女神になって、民間で篤く信仰されました。
摩多羅神(またらしん)という不思議な神がいました。
この神を説いた玄旨帰命檀(げんしきみょうだん)という平安時代から続いた天台宗の一派は、江戸時代に行われた宗教改革で、淫祠邪教として真言立川流(註)などとともに廃絶されました。
しかし、その片鱗はさまざまな所に密かに残されています。これが鬼子母神や中世の仮面芸能とも繋がることになります。
このようなわが国の神仏習合思想の闇の部分である「異貌の神々」については、稿をあらためて続編を書くことにします。
特に摩多羅神や歓喜天は、興味が尽きませんよ。お楽しみに。(2022.9.28)
(註)真言立川流;平安時代末に醍醐寺三宝院から派生したといわれる性的秘儀を伴う密教一派。
荼枳尼天や髑髏本尊を拝するシャーマン的集団で「煩悩即菩提」を実践し、13世紀頃に「彼の法」教団として最盛期を迎える。徳川幕府の邪教粛正策で消滅した。
図版)
仏界と六道輪廻図
八坂神社の茅の輪くぐり
荼枳尼天像
訶梨帝母像(園城寺蔵)

*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。

 

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