日別アーカイブ: 2025年10月24日

仏ルーヴル美術館館長、強盗犯が侵入した窓を映す「監視カメラなかった」 察知に遅れ

世界を揺るがしたフランス・パリのルーヴル美術館から総額8800万ユーロ(約155億円)相当の宝飾品が盗まれた事件の続報です。

 

 

ルーヴル美術館のローランス・デ・カール館長は、監視カメラの体制が十分ではなかったことを認めた。画像はルーヴル美術館のバルコニーを調べる鑑識捜査官

 

フランス・パリのルーヴル美術館から総額8800万ユーロ(約155億円)相当の宝飾品が盗まれた事件で、ローランス・デ・カール館長が22日、フランス国会上院(元老院)の公聴会に出席した。

館長は、美術館の監視カメラの体制が不十分で、強盗犯の侵入を早期に察知できず、被害を防げなかったことを明らかにした。

デ・カール館長が公の場で発言したのは、19日の盗難事件後初めて。

館長は、ルーヴル美術館の周辺に設置された監視カメラは「老朽化」し、体制がぜい弱だったと述べた。

美術館の外壁を映していた唯一のカメラは、盗まれた宝石が展示されていた「ガレリア・ダポロン(アポロンのギャラリー)」に通じる2階のバルコニーとは別の方向を向いていたと、デ・カール氏は説明した。

デ・カール氏は「私たちはあの宝飾品を守れなかった」と述べ、「凶悪な犯罪者から」守られている人などいない、「ルーヴルでさえも」と付け加えた。

閣僚らは記者会見やインタビューの中で、美術館の警備体制の不備を否定してきたが、デ・カール氏はルーヴル美術館が「敗北した」ことを認めた。

館長の証言から、世界最多の来館者を誇る美術館における警備の難しさと、警備体制のぜい弱さがはっきりと浮き彫りになった

「非常に不十分な」監視体制、以前から指摘

デ・カール氏は、美術館の周囲を監視するカメラシステムは「非常に不十分」で、館内の一部エリアに設置されたカメラは、現代の技術に対応できないほど古いものだと明かした。

ルーヴル美術館には昨年だけで約870万人が訪れている。

それにもかかわらず、警備への投資が遅れるなど、予算面の課題に直面している実態があるとした。

監視カメラの数を倍にしたいと、デ・カール氏は述べた。 デ・カール氏は2021年に館長に就任した。

その際、以前勤務していたオルセー美術館の近代的な設備とは対照的に、ルーヴルの設備は「時代遅れ」なので注意するよう言われたという。

22日の公聴会で議員からは、セーヌ川に面した外壁にカメラが1台あるだけで、しかもそのカメラが間違った方向を向いていたのはなぜなのかなど、ルーヴル美術館の警備体制を疑問視する声が上がった。

この一つの失敗が、強盗犯の侵入をまったく察知できない状況を招いた。

強盗犯は宝石が展示されていた「ガレリア・ダポロン」に近い場所にトラックを停め、機械式リフトを使って館内に侵入した。

「ルーヴルにはぜい弱性があることを、完全に認めます」とデ・カール氏は議会の公聴会で述べた。

デ・カール氏は、警備員たちが強盗侵入の発覚直後に来館者らを素早く外へ避難させたと称賛したものの、「私たちは、強盗犯の到着を十分に早く察知できなかった(中略)周辺警備のぜい弱性は知られていた」と認めた。

美術館は22日に再開されたが、「ガレリア・ダポロン」は閉鎖されたままだった。

ルーヴル美術館には、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」をはじめとする貴重な美術品が収蔵されている。

捜査当局は、10分足らずの間に世界有数の美術館から宝飾品を盗んだ4人組の行方を追っている。

盗まれたのは9点。

そのうちの1点、ナポレオン3世の妻が所有していた王冠は、犯人らが途中で落としたと見られ、現場付近で発見された。王冠は損傷していた。 盗まれた品々は、これまで「評価不可能な、かけがいのない価値がある」とされてきた。ナポレオン1世がマリー・ルイーズ皇后に贈ったダイヤモンドとエメラルドのネックレス、ナポレオン3世の妻であるウジェニー皇后が着用していたティアラ、さらにルイ・フィリップ1世の妻マリー・アメリ王妃が所有していた複数の宝飾品などが含まれている。

デ・カール館長は公聴会で、回収された王冠について、犯人が展示ケースから取り出す際に押しつぶされた可能性が高いと説明。

「初期評価では、繊細な修復はできそうだ」と述べた。 デ・カール氏が公聴会で指摘した美術館の問題点には、過去10年間にわたる監視・警備スタッフの削減や、最新の映像機器に対応できない老朽化したインフラが含まれていた。

同氏は、2026年初頭から警備強化のための作業を開始したいとしている。

しかし、かつて王宮だった美術館の老朽化したインフラを考慮すると、この取り組みには困難が予想される。

デ・カール館長は、強盗事件を受け文化省に辞任を申し出たが、拒否されたという。

同氏は、ルーヴルの現状をめぐる懸念を以前から訴えてきたと、公聴会で述べた。

デ・カール氏がルーヴルとその歴史的コレクションの保護よりも、自己保身を優先したとするメディアの批判的な報道については、同氏は感情的になり、憤慨した様子で反論した。

「館長として、内部告発者として私が警鐘を鳴らしていたことが、ある意味で、19日に現実となってしまったことに傷ついている」 「私たちはルーヴルで重大な失敗を犯した。私がその責任を取る」と、デ・カール氏は述べた。

ローラン・ヌニェス仏内相は22日、犯人は必ず捕まると「確信している」と仏ラジオ「ヨーロッパ1」で語った。

検察当局は、犯人が犯罪組織の指示を受けていた可能性があるとの見方を示している。

 

 

(英語記事 No camera covered Louvre wall where jewel thieves broke in, director says)